売掛債権の売買で資金調達したくてもそれができない債権とは?


これまでは資金調達の手法として借り入れに依存してきたけれど、これからは借金を増やさない調達方法がよい!と中小企業を中心に新たな資金調達手段として注目されつつあるのがファクタリングです。

ファクタリングは、企業などが保有する売掛債権をファクタリング会社と売買することで資金化する仕組みです。

売掛債権は流動性の低い資産であるといえるため、存在自体に頭を悩ませている経営者も中にはいるでしょう。その売掛債権を譲渡することで資金が調達できることは、ファクタリング利用会社にとっては一石二鳥ともいえます。

ただ、どのような売掛債権であっても売買に使えるわけではありませんので、どのようなケースではファクタリングが利用できなくなるのか把握しておきましょう。

 

ファクタリングの利用の妨げとなる特約

キャッシュフローの健全化に加え、資産のオフバランス化を可能としながら資金調達もできることがファクタリングの魅力です。

まさに万能ともいえる資金調達の手法と思うかもしれませんが、保有する売掛債権が譲渡禁止特約の付帯されている場合、ファクタリングは利用できません。

 

障壁となるのは債権譲渡禁止特約

売掛債権の契約に対して、譲渡を禁止する旨が契約内容に記されている場合には、債権譲渡を行うことはできないのでファクタリングは利用できません。

ファクタリングだけでなく、売掛債権担保融資など融資を利用する場面においても、この債権譲渡禁止特約が障壁となり、担保として設定できなくなることで資金調達は難航することとなります。

そもそも売掛債権は流動性の低い資産ですので、債権譲渡禁止特約が付帯されていると、さらに流動性を低下させることになります。

 

関係するのは民法第466条の規定

債権の譲渡については、民法第466条にその旨の記載がされています。ここでは、債権は譲渡することが可能であること、ただし、当事者が譲渡を許さないとして反対の意思を表示したときには適用されないことが記されています。

さらに、契約書内に譲渡禁止特約が付されていることを知らない第三者であれば債権譲渡は可能ですが、譲渡される債権の契約内容を知らずに購入することは購入者側の重過失となり、債権譲渡は無効という扱いになります。

債権者に代わって売掛債権の回収を行う取立て屋など、悪質な債権回収代行業者に対して債務者を保護するための規定かもしれませんが、この特約があることで売掛債権が有効に資金調達に活用できないというケースも見られる状況です。

 

120年ぶりの民法改正で債権譲渡禁止特約に影響が!

ただ、2017年5月には120年ぶりという民法の改正が行われ、「企業や消費者の契約ルールを定める債権関係規定(債権法)」も見直しとなり、ファクタリングの障壁となっていた債権譲渡禁止特約も改正が行われました。

施行されるのは2020年4月1日からですが、どのように変更されたのかその内容を確認しておきましょう。

 

債権譲渡禁止特約が付帯されていても無効

まず、これまでは当事者の反対の意思表示があれば、債権譲渡は無効になることが規定されていました。しかし改正後は債権譲渡が禁止や制限されていたとしても、債権譲渡は成立するとされたため、債権譲渡禁止特約が付帯されていても無効となります。

 

●対抗可能なケースに注意

ただ、債権譲渡禁止特約は無効であったとしても、債務者(売掛先)が譲渡の事実を知らなかった場合には、譲渡先(ファクタリング会社)に支払うことを拒否し、当初の取引相手(ファクタリング利用会社)に支払うことで対抗可能としています。

売掛先にしてみれば、売掛債権が譲渡されたことで支払い先がファクタリング利用会社からファクタリング会社に変更されることになると、経理処理が煩雑になるといった手間もかかります。

また、送金先となるファクタリング会社が、もし反社会的勢力に類する悪質企業だった場合、コンプライアンス上の問題も出てくると考え、このような内容が追記されているといえるでしょう。

 

ファクタリング会社から売掛先に催促が可能に

さらに、もし予定どおり売掛先からファクタリング利用会社に代金の支払いがない場合には、まずはファクタリング利用会社から売掛先に支払いしてもらえるように催促することになります。

それでも売掛先から入金されない場合には、売掛債権を買い取ったファクタリング会社から、直接売掛先に支払いを求める催促を行ってもよいことになりました。

 

現時点でも債権譲渡禁止特約が付帯されていると諦めず交渉を!

現時点では契約書に債権譲渡禁止特約が付されている場合は有効となるため、ファクタリングに売掛債権を利用したくてもできないと頭を抱えている経営者もいるかもしれません。

ただ、債権譲渡禁止特約は、売掛債権の債務者である売掛先が禁止について解除する、または了承することで失効させることが可能です。

譲渡禁止特約を付さない契約書を再度作成して契約を締結し直すか、譲渡禁止特約の債権に対して譲渡を承諾する旨が記された書面を発行してもらうことで可能となります。

いずれにしても口約束ではなく、必ず書面上で承認を得ることが必要となると理解しておいてください。

 

まとめ

これまで売掛債権を売買することで資金を調達するファクタリングを利用したくてもできなかった問題は、改正民法が施行されることで解決されます。

ただ、現時点では売掛先に債権譲渡を禁止している部分を解除してもらえるようにお願いするしかありません。

売掛先のとの付き合いが長く、なぜ資金を調達する必要があるのかなど話せば、諸事情を理解してもらうことができる場合には相談してみることも方法の1つです。