借入金があると、毎月少しずつ返済を行うことが必要となりますし、利益が出れば税金を支払うことになります。いずれも手元のお金が減少することになるので、支払いに充てた分は経費として扱うことができるだろうと考えてしまう経営者の方もいるようですが、そうではありません。
そこで借入金の返済や税金は経費として扱うことができるのか、それぞれご説明します。
借入金に対する会計処理
銀行やノンバンク、どちらからでもお金を借りたときには、会計処理を行う上で負債を増加させることになり、返済すれば負債を減少させます。さらに、借入金に対して発生する利息は費用の発生になります。
借入金により収益が発生することはなく、負債の増減でしかならないため、返済しても経費として扱うことはできないということです。
会計処理上の利益と手元のお金の収支のズレ
会社が納める法人税は、会社の利益が増えればその分、納めるべき金額も高くなります。ただ、手元のお金の収支と損益の収支は異なります。
会社が銀行から融資を受けた場合、手元のお金は増えますが損益計算書上の黒字にはなりません。
売掛金が多いとズレも大きくなる
借り入れ以外にも、前受金や預り金なども一時的に預かっておくお金なので利益には繋がりませんが、手元のお金は増えなくても売掛金や受取手形など利益を黒字化させる資産もあります。
たとえば商品やサービスを販売・提供したときには、その場で代金を受け取らず後日回収することが商慣習となっているため、売上を計上すると同時に売掛金で処理を行うことになります。
すると、売上に対する代金は回収されていないので手元の資金は増えませんが、損益計算書上は売上が上がることになるのです。
その結果、損益計算書上では黒字なのに、手元の資金は不足という状況を発生させることになります。このズレが、最悪の場合黒字倒産に繋がってしまうリスクを高めることになると理解しておくようにしましょう。
借入金が関係する費用で経費として計上できる支払い
借入金の返済を行っても経費として計上できませんが、それは借入金の元金部分のことです。お金を借りたことにより、発生する支払利息を支払った場合は経費として計上できます。
そのため、借入分の返済は貸借対照表に記載されますが、その内、支払利息は損益計算書の経費として記載されることになります。
また、借りた資金が信用保証協会の保証付きの融資である場合には、信用保証協会に対して支払う保証料も経費にすることが可能です。
この場合、保証料を一括払いしていても、経費として計上できるのはその決算期間内に行った返済に対しての保証料のみですので注意しましょう。
翌期以降の返済に対して発生する保証料分は、前払費用で資産計上しておき、期ごとに期間内の保証料分を費用に振り返える処理が必要です。
遅延損害金の扱い
では、返済が遅延している場合に発生する遅延損害金はどのような扱いとなるのでしょう。
遅延損害金は債務不履行によるペナルティという扱いであり、損害賠償金に含まれます。
損害賠償金は実態により、その金額が期末までに確定していない場合でも、損害賠償金として相手に申し出た金額について未払計上することが可能です。
そのため、返済が遅れている場合において、何割の遅延損害金が発生するか算定できる場合は、支払期日に債務が確立したとして期日到来基準により、未払金として計上することが可能となります。
納めた税金は経費として計上可能か
手元のお金が減るけれど経費として計上できない支払いには、他にも法人税や源泉所得税などが挙げられます。これらの税金は損益の経費でなく、資産を取り崩す形として扱われることが理由です。ただ、同じ税金でも事業税や消費税などは経費として扱うことが可能です。
なお、法人税については、延滞税、加算税、罰金などの取り扱いが厳しい点にも注意しましょう。事業税や消費税と同様、事業活動の中で発生した税金なのに経費として計上できないことに不満を感じる経営者の方もいるかもしれません。
法人税法では、損金の額に算入されない租税公課について次のとおり規定されています。
- ・法人税、地方法人税、都道府県民税・市町村民税の本税
- ・各種加算税・各種加算金、延滞税・延滞金(地方税に対する納期限延長に係る延滞金以外)・過怠税
- ・罰金・科料(外国または外国の地方公共団体が課する罰金または科料に相当するもの含む)・過料
- ・法人税額から控除する所得税・興特別所得税および外国法人税
たとえば社会保険料の延滞金などは、この中に含まれていませんので経費として計上しても問題ないということです。
現金が減らないのに経費計上できる費用は節税対策に
お金は減るのに経費として計上できないもののあれば、経費として計上できるのにお金は減少しない減価償却費や貸倒引当金などもあります。
手元のお金は減らないのに経費として計上できる費用なので、節税に大きな影響を与えることになるでしょう。
まとめ
借入金の返済を行っても元金部分は経費として計上できませんが、利益には影響することはなくても手元のお金の流れには影響します。
利益は出ているのに手元の現金が少ないと、様々な支払いに悪影響を及ぼすことになるため、利益と手元の現金のズレを把握しておかなければ黒字倒産してしまう可能性も出てきます。
会計処理上の利益だけでなく、実際の現金の流れもしっかり把握しておくようにしましょう。