【2020.6】手形割引とファクタリングの違いをわかりやすく解説!


手形割引とファクタリング、どちらも売掛債権を早期に回収することを目的として利用される方法ですが、似た手法なのでそれほど大きな違いはないのでは?と認識されがちです。

しかし実際には手形割引とファクタリングは大きな違いが複数あり、内容を理解していないまま資金調達に利用してしまうと、あとでこんなはずではなかった…と後悔することになりかねません。

そこで有効な資金調達に結びつけるためにも、手形割引とファクタリングがそれぞれどのような資金調達の手法なのか、その内容や特徴をわかりやすく解説します。

 

手形割引とファクタリングで対象になるのは売掛債権

手形割引とファクタリング、どちらも中小企業が用いる資金調達の方法として知られていますが、対象となるのは売掛債権で同じです。

売掛債権とは主に受取手形と売掛金で構成され、手形割引は受取手形、ファクタリングは売掛金をそれぞれ売却することで資金を調達できます。

受取手形とは商取引で発生した手形債権のことで、売上代金や売掛金の支払いを一定期間延長させる方法として用いられます。その手形を受け入れた場合、すべて受取手形とされます。

売掛金とは商品販売やサービス提供などの営業取引から発生する未収入金のことで、1年以内に回収することが見込まれるものを指しています。

企業の信用に基づいて将来、支払いが約束された取引により使用され、後日支払いとなる形で販売したときの未回収の代金のことです。

 

手形割引とは具体的にどのような資金調達の方法?

手形は記載されている期日にならなければ現金は受け取れないので、入金されるまでの期日における支払いなどに充てる資金が不足してしまうことがあります。

もし受け取った手形期日がもっと早ければ…と思うこともあるでしょうが、このような場合に利用されるのが手形割引です。

期日よりも前に手形を銀行や手形割引専門業者などに売却し、先に現金化させる手法が手形割引です。利用する際には手数料や利息が発生しますので、手元に受け取ることができるのはその分を差し引かれた金額になります。

手形割引は手形を買い取ってもらう形ではあるものの、手形を担保として融資を受けることになるので、厳密には売掛債権の売買ではなく融資という扱いです。

 

手形割引を利用した場合の取引の流れ

手形割引で資金調達する場合には、銀行や手形割引専門業者などに手形を買い取ってもらうように依頼をします。

このとき、買い取ってくれる銀行などに融資に関する取り決めなどが規定されている銀行取引約定書を提出することなどが必要です。

銀行などが手形を発行した振出人に、本当に期日に支払うことができる能力があるか調査を行い、支払能力が認められれば手数料分などを割り引かれた金額を受け取ることが可能です。

 

手形割引は引き受けに上限がある

手形割引は受取手形という売掛債権を担保に融資を受けることとなるため、引き受け可能となる上限額が定められていることが多いといえます。

もし手形期日よりも前に上限金額に達した場合は、すでに割り引いた手形が決済されるまで、新たに手形割引の利用はできないということです。

 

手形が不渡りになった場合

手形割引を利用する上でもっとも注意したいのが、割り引いた手形が不渡りになってしまったときです。

手形割引はローンではありませんが、融資を受ける形となります。そのためもし手形の振出人が決済日に支払いができず、手形が不渡りとなってしまった場合には、手形に記載された金額を一括で弁済しなければならないなど買戻しリスクが発生する点が大きなデメリットです。

また手形以外の不動産などの資産を担保に差し入れることを求められる場合もあるので、貸し倒れリスクと背中合わせの状態で資金調達に利用しなければならないデメリットもあると留意しておきましょう。

 

ファクタリングとは

同じ売掛債権でも、ファクタリングで現金に換金する譲渡対象となるのは売掛金です。

売掛金は掛け取引によって発生する売掛債権ですが、この売掛債権をファクタリング専門業者などに買い取ってもらい支払期日よりも前に現金化させる仕組みであり、業者に対する手数料分を差し引かれた金額が支払われます。

手形割引と同じでは?と思うかもしれませんが、ファクタリングの場合は売掛債権の売買そのものによる資金調達の手法なので、融資を受けるわけではなく返済負担も発生しません。

掛け取引において、その代金が支払われる期日は事前に取引先と決めることになるでしょう。月末締めの翌月末払いという支払いサイトで契約を結んだ場合、最大で売上からその代金が支払われるまでの期間は最大2か月空いてしまうことになります。

その間に仕入代金の支払いや人件費の支払い、様々な経費の支払いに充てる十分なキャッシュがあればよいですが、ときには運転資金が不足するといったこともあるでしょう。

このような場合、ファクタリングで将来受け取る予定の売掛金を前倒しで回収することができれば、資金繰りを悪化させることはありません。

 

ファクタリング利用後に売掛先が倒産してしまった場合は?

ファクタリングは手形割引とは異なり、融資を受けるわけでもない点も大きなメリットです。

手形割引では、手形の振出人が倒産してしまうなど不渡りが発生したときには、手形に記載された金額を全額弁済しなければなりません。

しかしファクタリングの場合この償還請求権はない契約がほとんどのため、仮にファクタリングを利用して現金化した後、売掛先が倒産してしまい売上代金の回収ができなくなってもその弁済負担を負うことはないのです。

貸し倒れリスクはファクタリング専門業者が背負う形で契約が結ばれるので、リスクを移転するという意味でも利用価値があります。

 

他にも手形割引とファクタリングに違いはある?

手形割引とファクタリング、どちらも売掛債権を用いた資金調達の方法であり、期日よりも先に現金化させるという点では共通しています。

しかし上記のように受取手形なら振出人、売掛金なら売掛先が倒産するなどで不渡りや回収不能状態となったときの貸し倒れリスクは誰が背負うことになるのかという点で大きな違いがあります。売掛債権を対象とした融資なのか、それとも売買なのかといった部分でも異なります。

他にも手形割引とファクタリングではいくつか異なる点がありますのでその内容を把握しておきましょう。

 

資金調達する際の発生するコストの違い

手形割引を利用した場合、銀行なら1.5~5.0%、手形割引業者であれば3.0~15.0%が一般的に発生する手数料の相場となります。

対するファクタリングの場合、利用者とファクタリング専門業者のみで契約を結ぶ2社間ファクタリングであれば10~20%、間に売掛先を挟む契約である3社間ファクタリングなら1~5%が手数料の相場です。

どちらもそれほど差はないように感じるかもしれませんが、実際には手形割引の方がかかるコストは比較的低めと判断できます。その理由は支払期日までの期間です。

手形割引の場合、入金されるまでの期間は長ければ200日を超えるものもあるのに対し、ファクタリングは長くても60日が一般的です。

そのため発生する手数料はそれほどかわらないとしても、手形割引の方がコストは低いと考えられるでしょう。

なお手形割引なら振出人、ファクタリングは売掛先の信用力が手数料に影響する点は共通しているといえます。信用力が高いほうが、手数料は安く抑えることが可能です。

 

利用者の信用力や信頼性の影響

手形割引は受取手形を担保に融資を受けることになりますが、ファクタリングは売掛金を売買して資金を調達します。

手形割引は貸し付けという扱いになるので、貸金業法により規制される点に注意しましょう。

貸金業法では貸金業の定義として、金銭の貸し付けや手形の割引、売渡担保などで金銭の交付や授受の媒介を行うことを業とするものと定めています。

そのため手形割引は貸金業法の対象となり、ファクタリングは貸金業法の対象にはならないということです。

手形割引が貸金業法の対象であるということは、貸金業登録を行っている業者のみが手形割引のサービスを提供できるということですし、利息制限法の範囲内での割引料設定が基本となります。

 

手形割引は貸金業登録業者のみが利用可能

手形割引を行うには貸金業登録が必要ということは、登録を行っていないのに手形割引のサービスを提供しようとする業者は明らかに悪徳業者であると判断しやすいことはメリットです。さらに正規の業者を利用する上で、貸金業登録がされているという面で信頼性が高いのもメリットといえるでしょう。

反対にファクタリングの場合、貸金業のような登録制度は特に設けられておらず、手数料も貸金業者でないことから利息制限法の縛りを受けないため相場はあっても明確な上限の規定はされていません。

そのため悪徳業者が存在しても利用者自身が見極めることが必要となり、法外な手数料を設定されていたとしても両者合意のもとで契約が成立してしまう点がデメリットです。

ファクタリングを利用する場合には、売却する売掛金の相場を知るために複数社から見積もりを取得し、悪徳業者ではないことを確認した上で契約を結ぶことといえます。

 

利用する上での審査の違い

手形割引は融資を受けて資金を調達することとなり、ファクタリングは融資ではなく売買取引による契約で資金を調達することになります。

このことからもわかるように、手形割引は融資を受けるという以上、銀行や手形割引専門業者で行う審査基準がファクタリングよりは厳しくなってしまいます。

どちらも発生する手数料は、売掛債権を支払うことになる振出人、そして売掛先の信用力が影響します。

しかし手形割引ではその売掛債権を持ち込む利用者の信用力も審査では重視されることになるので、起業して間もない場合や赤字決算・債務超過・税金滞納という状態では審査で利用を断られる可能性があるということです。

それに対しファクタリングの場合、審査で重視されるのはやはり売掛先の信用力です。利用者が起業して間もない場合でも、決算書が赤字だったり債務超過の状態でも、さらに税金に未納分があったとしても利用できる可能性は低くありません。

利用する上での審査では、ファクタリングの方が審査は甘いので利用しやすいことが大きなメリットです。

 

手形割引とファクタリングはどちらを利用したほうがよい?

手形割引とファクタリングのどちらを利用して資金を調達したほうがよいのか迷うこともあるでしょうが、前提として手形割引や受取手形、ファクタリングは売掛金を保有していることが必要です。

仮にどちらも保有していて一時的に必要な運転資金を調達しなければならないという場面において、より有効な方法を利用したいと考えるのなら、コスト面や資金繰りで考えるのかそれとも貸し倒れリスクを優先させるのかといった部分で判断しましょう。

 

コスト面や資金繰りで考えるのなら

手数料割合で考えれば手形のほうが入金されるまでの期日が長めであることが多いため、かかる費用も割安となります。

また入金までの期間が長期化すると資金繰りは悪化しやすくなりますので、このような場合には手形割引で資金調達したほうがよいでしょう。

ただし建設業者などの場合、売掛金でも入金までかなりの期間が空いていることもありますので、その場合は売掛金でファクタリングを利用し資金調達することを検討してください。

 

貸し倒れリスクで判断するなら

手形割引は万一、振出人が支払いできなくなり、割り引いた手形が不渡りになればその弁済負担を背負うことになってしまいます。

そうなると資金調達した意味がなくなり、たちまち資金繰りは急激に悪化してしまうでしょう。

このリスクを防ぎ安心して資金調達したいなら、売掛債権を買い取るファクタリング専門業者が貸し倒れリスクを負担してくれるファクタリングの利用をおすすめします。

もし取引先が倒産するかもしれないと感じる部分があるのなら、貸し倒れリスクを移転することにも繋がります。ただファクタリング専門業者も売掛債権を買い取るにあたり売掛先の調査を行いますので、倒産リスクの高い債権は買い取ってもらえない可能性もあると理解しておきましょう。

 

財務状況が好ましくない場合は

手形割引は融資を受けることになるため、ファクタリングよりも審査のハードルは上がります。

そのためまだ創業して間もない場合や、決算書がマイナスの場合、すでに債務超過に陥っていたり税金を滞納しているなどで信用力に不安がある場合にもファクタリングを利用したほうがよいでしょう。

ただし2社間ファクタリングでは利用者が売掛先から売上代金を一旦回収することになるため、あまりにも財務状況が悪いとその代金がファクタリング会社に渡されず使い込まれてしまうと懸念されてしまう可能性があります。

また売掛先から利用者の口座に売上代金の入金があってすぐ税金の差し押さえ等が行われると、やはりファクタリング専門業者は代金の回収ができなくなってしまいます。

そのようなリスクを考え、状況によっては利用を断られることもあると理解しておくべきでしょう。

 

まとめ

手形割引とファクタリングはどちらも似た資金調達の方法に感じるかもしれませんが、そもそも取引形態が融資と売買という大きな違いがあり、貸し倒れリスクの責任の所在や発生するコスト・信頼性・審査のハードルなどいろいろ異なる点はあります。

受取手形と売掛金、どちらも保有しているとどっちを利用した方がよいのか迷うこともあるでしょうが、それぞれ異なる点を確認して何を重視したいのかその項目を優先させて決めるとよいでしょう。