融通手形で資金調達すればいずれば倒産する!その理由と仕組みとは?


期日がまだ到来していない手形を売却し、現金化する事業者が行う資金調達方法に手形割引があります。手形割引は正規の資金調達方法ですが、この仕組みを悪用して資金調達しようとする融通手形と呼ばれる方法がありますが、利用してしまうと適切な資金調達方法でないことで倒産する可能性があります。

 

そこで、融通手形による資金調達とはどのような手法を用いて行われるのか、なぜ倒産に直結することになるのか、その理由と仕組みについてご説明します。

 

融通手形とはどのように資金を調達する手法?

事業者が商取引の代金として手形を受け取ることもあるでしょう。しかし、商取引の実態がないのに手形を振り出される融通手形は、割引して現金を調達することを目的としています。

 

手形の振出人が名宛人に融通することから融通手形と呼ばれていますが、手形による金銭の貸し借りが行われることとなると考えられます。

 

融通手形が資金調達に利用される流れとは、まず資金繰りに悩んでいる事業者同士が、それぞれお互いを名宛人にして手形を振り出して交換します。
それぞれが受け取った手形は、手形割引により現金化させることで資金を調達するといった方法です。

 

もし相手が手形の発行ができない場合には、手形を振り出し名宛人に渡して、手形割引により現金化させて振出人と名宛人で半分ずつ分け合い、運転資金を調達するという手法まで用いられます。

 

いずれの場合も手形を振り出すもの、受け取るものの双方が、他に資金を調達する方法を失い、限界に達したときに利用されていますので、正規の商取引で振り出される手形よりも不渡りになる可能性が非常に高いことを理解しておく必要があります。

 

融通手形は不渡りになるリスクが高い理由

そもそも資金繰りが悪化し、銀行やノンバンクなどから融資を受けることができず、どのように資金調達すればよいか…と頭を悩ませ深刻な状況に置かれた事業者が考える資金調達の方法が融通手形を用いた手法です。

 

そのため、本来の商取引で振り出される手形よりも不渡りになるリスクが高く、もし振出人が期日に支払い不能となり不渡りになれば、割り引いて現金化させた手形は買い戻さなければならなくなります

 

そもそも資金に困って融通手形を使い手形割引で資金調達したのに、買い戻す資金などどこにもないという状況でしょうから、不渡りを出した振出人と同時に連鎖倒産してしまうに至るという可能性が高くなるのです。

 

融通手形を使った具体的な資金調達の例①

融通手形を使い資金調達する仕組みを何となくイメージできるかもしれませんが、具体的にどのように資金が流れることになるのかご説明します。

 

まず、資金繰りが厳しくなり資金を調達しなければならなくなったA社は、親しくしているB社に500万円の手形を振り出してもらいます。

 

A社はB社から手形を受け取り、金融機関で手形割引により現金化させ資金調達したとしましょう。

 

A社に振り出した手形の決済期日には、B社は500万円をA社から受け取り決済資金に充てることとなりますが、もともとお金に困った状態であるA社は500万円を準備できません。

 

しかしA社に渡した手形の決済ができなければ、B社は手形が不渡りとなり倒産してしまいます。A社は何とかB社に渡す資金を準備しなければならない、B社は何としてでもA社から資金を受け取り決済しなければならないという窮地に立たされることになるのです。

 

そこで、A社はB社から再度、融通手形を振り出してもらい手形割引してB社に前回振り出してもらった手形の返済資金として渡します。

 

これを延々と続けることになれば、融通手形の金額は大きく膨らんでいくのでいつまでもA社はB社にお金を借りたままの状態が続き、B社も振り出す手形の金額が膨らみ続けます。

 

いずれは手形割引による資金調達にも限界が訪れ、A社もB社も連鎖倒産してしまうという流れです。

 

融通手形を使った具体的な資金調達の例②

資金繰りが悪化し、何とか資金調達しなければならないC社とD社が、それぞれ資金を調達するため互いに手形を振り出し合います。このような形の融通手形を、書合手形や慣合手形ともいいます。

 

C社とD社でそれぞれ500万円ずつ手形を振り出し合い、受け取った手形はそれぞれが取引する金融機関で手形割引により現金化させて資金調達したとしましょう。

 

その後、それぞれの手形決済期日が訪れ、双方が自社の振り出した手形の資金を決済すればよいのですが、もともと資金に困っている状況で資金の準備は困難です。

 

仮に一方だけが決済資金の準備ができず、不渡りになれば相手は手形割引で現金化させているため、金融機関からその手形を買い戻すこととなり二重に支払い負担を負います。

 

そのような事態を回避しようと、さらに金額の大きな融通手形を振り出して手形割引を行い、資金を用意するといったことを繰り返すことになれば、いずれ両社とも破綻してしまうという流れに至ります。

 

融通手形で連鎖倒産する仕組み

融通手形は事業者同士が互いに手形を振り出し合い、手形割引で現金化させ資金調達することになりますが、もし一方が不渡りになれば、連鎖倒産を防ぐために自社が振り出した手形の決済を済ませ、さらに割引して現金化させた手形は買い戻すことが必要になります。

 

手形を買い戻すということは、手形割引に用いた手形の額面に記載された金額を準備するということです。

 

自社が振り出した手形の決済代金に加え、相手の振り出した手形の代金まで負担しなければならなくなりますが、二重に代金の支払いができるならそもそも融通手形による資金調達は利用しないはずです。

 

手形の裏書という行為は、譲渡した手形(または割引した手形)が不渡りになったときには、裏書人が手形金額の責任を負うこととされています。それは、手形を買い戻すことを意味していますので、融通手形を手形割引してしまうと、振出人が期日に決済するまで手形に対する責任は消えません。

 

手形割引は手形の売買ではない

手形割引とは、期日が到来する前の手形を、銀行や手形割引業者に買い取ってもらい、期日よりも前に現金化する資金調達の手法です。

 

実際に受け取ることができる現金は、手形の額面から手数料などが割り引かれた形になりますので手形割引という名称がついています。

 

手形を買い取ってもらうという形ですが、手形を担保に現金を借りることになりますので融資を受けることとなります。

 

そのため、担保とし差し入れた手形が決済されず不渡りになれば、その弁済を請求されることになるわけです。

 

なお、手形割引は多くの場合、引き受け可能限度額が決められているため、手形期日よりも前にその上限金額に達すると、それまで依頼した手形が決済されるまで手形割引は利用できなくなります。

 

双方が手形を振り出し合い、決済日に手元に資金がなく、またそれぞれが融通手形を発行し合うという手法で一時期は延々と資金の調達ができたとしても、いずれは引き受け可能限度額に達してしまい、手形割引も利用できなくなりどちらも倒産してしまう可能性があるということです。

 

融通手形で一度成功させてしまうと抜け出せなくなる?

融通手形は麻薬にたとえられることがある資金調達の手法で、一度試しに行って成功した場合、やめようと思ってもなかなかやめられなくなるようです。

 

融通手形を振り出した後、支払期日には手形額面の金額を支払い決済することとなります。

 

もともと資金を調達できない状態で融通手形を振り出している状況であることから、期日に手形の決済することは難しく、またそれぞれが融通手形を発行し手形割引で現金化させるということを繰り返し行うことになってしまうのです。

 

融通手形を受け取ってしまわないために

融通手形を発行して資金調達する手法とは、手形用紙を有価証券に換え現金化する錬金術のような方法であり、一旦利用して成功してしまうと、また次も…と簡単に抜け出せなくなることが特徴です。

 

資金に困り、自らが融通手形を振り出すことは避けることができても、受け取った手形が融通手形であると後々大変です。そのため、融通手形を受け取り倒産のリスクを高めないためにも、手形を受け取る前に次に該当しないか確認するようにしましょう。

 

  • ・手形の振出人と名宛人の業種が異なるなど商取引の内容が推定しにくい手形の場合
  • ・仕入先から販売先に手形を発行しているなど手形の流れが反対の場合
  • ・手形の額面金額が端数や消費税のない数字になっている場合
  • ・手形の振出人と名宛人が同一グループ内の企業である場合
  • ・メインバンクの手形用紙が使用されていない場合
  • ・支払期日が訂正されていたり通常の場合と異なる場合
  • ・手形額面が売上よりも過大で月商の2割を超える場合

 

融通手形は見分けることが難しい場合もありますので細心の注意が必要ですし、もし融通手形を発行して欲しいと依頼されても断ることが大切です。

 

融資以外の資金調達の方法は手形だけでない

手形を割り引いて資金調達しようと考えるケースの多くが、銀行からの融資を受けたくても審査が通らなかったり、資金を調達しなければならない日数まで時間がない場合などでしょう。

 

ただ、手形割引は手形を現金化させる手法ですが、他にも売掛債権を現金化させるファクタリングという方法もあることを知っておいてください。

 

ファクタリングは回収していない売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらい、入金される予定期日よりも先に現金化して資金調達する手法です。

 

売掛金は商取引を掛けにより行った場合、商品やサービスを販売・提供して請求書を渡し、そこから入金されるまでの間に発生する資産です。

 

売上は計上されているけれど、その代金が入金されていない状態であり、請求できる権利であり資産として扱われています。

 

入金されるまでの期日が長期化すれば、その間の支払いに充てる資金不足に苦しくなることもありますが、ファクタリングを利用すればその売掛金を前倒しで受け取ることが可能です。

 

手形ではなく売掛金を使った資金調達の方法

ファクタリングと手形割引は似ていると感じた方もいるかもしれませんが、手形割引は手形を担保に融資を受ける資金調達の手法であるのに対し、ファクタリングは売掛金という売掛債権の売買で資金を調達する手法です。

 

そのためファクタリングを利用し、売掛金を現金化させた後で売掛先が倒産してしまい代金の回収ができなくなっても、その売掛金をファクタリング会社から買い戻す必要はなく、貸し倒れリスクはファクタリング会社が負う形で取引が行われます。

 

また、金銭の借り入れで行われる審査は、融資を受けようとする方の信用力が重視されますが、ファクタリングの審査は売掛先の信用力が重視されることになるため、銀行融資の審査に通らなかったという方などでも利用可能です。

 

ファクタリングなら安全で資金調達までも早い

審査で重視されるのは売掛先の信用力であり、貸し倒れリスクも負担しなくてよいことで、安心・安全に資金調達が可能な手法といえますが、さらにファクタリングは最短で即日現金化が可能な場合もあります。

 

審査に時間がかかり銀行融資などの資金調達では間に合わないという場合でも、圧倒的に早く資金の調達が可能となるのは大きなメリットといえるでしょう。

 

ただし手形割引同様に、ファクタリングを利用する際にも手数料が発生します。この手数料はファクタリング会社によって決められますので、悪徳な業者を利用してしまうと割高な手数料が発生することとなり、十分な資金調達に至らなくなる可能性もあると理解しておくべきです。

 

ファクタリングを利用する上で注意したいのは悪徳業者の存在だけではない

ファクタリングで資金調達に用いられるのは売掛金ですが、その売掛金が発生していることを証明するのは、取引先との契約書だったり、請求書だったり、通帳の取引履歴だったりといろいろです。ファクタリング会社によって、提出を求められる書類の種類も若干異なります。

 

ただ、融通手形のように、ファクタリングでも同じような手法を用いて資金を調達しようとする悪質な利用者が存在します。

 

たとえば架空の請求書を作成し、商取引による売掛金が発生しているようにみせかけ、ファクタリング会社に偽の売掛金を買い取ってもらうように持ち込む行為などです。

 

他にも取引先同士が共謀し、架空の請求書を発行してファクタリングで現金化させ、得た資金を半分ずつ分け合うといったことも行われたり、通帳口座の写しに手を加えて取引があるように見せかけたりといったことも行われているようです。

 

このような行為は詐欺罪にとわれる犯罪ですので、絶対に行わないようにしましょう。

 

まとめ

商取引が行われていないのに手形を振り出す融通手形を一度資金調達に使ってしまうと、また繰り返し利用するようになり、その手法から抜け出せなくなってしまいます。

 

倒産するリスクを高める資金調達の手法ですので絶対に行わないようにしてください。

 

また、融資以外の方法で資金調達が可能となるファクタリングも、有効に活用すれば審査はハードルも低く、即日現金化が可能になるなど、中小企業にとって便利な手法です。

 

しかし手形割引と同じく、発生していない売掛金をファクタリングで現金化させ資金調達するといった行為が行われることがありますが、ファクタリング会社を騙して資金を調達する詐欺罪にとわれる可能性があります。

 

資金繰りに困るとありとあらゆる手段で資金調達しようと考えてしまうものですが、犯罪を行えば資金調達に繋がらないだけでなく、事業を続けることができなくなりますので絶対に行わないようにしてください。

 

手形割引とファクタリング、どちらも正規の方法で資金調達に用いるのなら有効な手法ですので、間違った使い方をしないようにしましょう。