キャッシュフロー計算書はなぜ必要?資金管理に有効とされる理由


キャッシュの範囲に含めた現金や預金の流れを計算するキャッシュフロー会計が1998年に導入されるまで、決算書とは損益計算書と貸借対照表のことを意味していました。

そのため、当初はキャッシュに関する情報は貸借対照表で決算時点の現預金額で知ることとなり、会計期間中の資金の流出入まで把握できなかったのです。

しかしキャッシュの流出入の要素を捉えるキャッシュフロー計算書によって、実際の現金や預金の流れや収支に関する情報をダイレクトに知ることができるようになりました。

そこで、キャッシュフロー計算書がなぜ企業経営において必要なのか、その重要性を徹底解説していきます。

 

キャッシュフロー計算書の作成は義務付けられていない

企業の一会計期間においての現預金などの収支を示す財務諸表であり、どのくらいの資金が流入し、反対に流出していったのかその流れを知ることが可能となります。

公開企など金融商品取引法が適用される大手の企業などは作成が義務付けられている書類の1つですが、中小企業などは作成が義務付けられていません。

そのためすべての法人が作成しなければならないわけではないため、運用方法なども一般的ではないのが現状です。

ただ、企業経営において手元の資金がショートすればたちまち倒産に至ることを考えると、現預金の流れを掴んでおくことは非常に重要なため、作成を義務付けられていないにしてもキャッシュの流れを把握する上で作っておいたほうがよい書類といえます。

 

キャッシュフロー計算書を作成するメリット

決算書のうち、損益計算書では一定期間の収益と費用の状態を知ることはできても、実際にどのくらいの資金が事業に投下され、回収されたのか把握することはできません。

しかしキャッシュフロー計算書では、損益計算書や貸借対照表では知ることのできないキャッシュを生む出す現金総出力や、何によってキャッシュを稼いでいるのか、さらに借入金にかかる利息の負担能力や、外部に対して資金調達をどのくらい依存しているのかなど、キャッシュの流出入のダイレクトな情報から確認することができます。

また、企業がどこに向かっているかという資本の活用方針について把握しておく上でも有効な書類といえます。

 

損益計算書や貸借対照表の弱点を補うことも可能

貸借対照表が示す資産や負債、純資産などの情報、そして損益計算書による売上高や利益などの情報ももちろん大切です。

ただ、その中には経理を行う担当者の主観としての判断や減価償却費などの見積もり計算なども混在することとなりますが、キャッシュフロー計算書は資金の流出入という事実を示しており、見積もり計算は一切加味されていません。

損益計算書や貸借対照表での会計情報の弱点を補う上でも、絶対的な現実を示すキャッシュフロー計算書は必要ともいえるでしょう。

 

利益が出ていても資金は不足することがある

勘定合って銭足らずという言葉を耳にしたこともあるでしょうが、損益計算書上では利益が出て黒字だとしても、支出が収入を上回れば手元の資金が不足してしまいます。

損益計算書上の利益と手元に実際にある資金にはズレが生じるということになりますが、この資金不足により支払いができなくなれば例え黒字でも企業は倒産します。

資金不足は倒産という最悪の事態に直結することになるので、キャッシュの流出入に関する情報は常に把握しておくことが必要なのです。

 

キャッシュフロー計算書で管理する資金の範囲

キャッシュフロー計算書が対象とする資金は現金と現金同等物とされていますが、具体的なそれぞれの内容は次のとおりです。

 

現金

現金には手元の現金、そして当座預金や普通預金、通知預金などの要求払預金が含まれます。

 

現金同等物

換金が容易であり、価値変動に僅少なリスクしか伴わない短期投資のことで、たとえば取得してから満期日や償還日までの期間が3か月以内の定期預金、譲渡性預金、売り戻し条件付現先、コマーシャル・ペーパー、などが含まれます。

ただ、取得日から満期日や償還日までが3か月を超える場合でも、現金同等物として扱ったほうがよいと考えられる場合には、経営者などの判断で現金同等物として扱うこともできます。

 

当座借越の取り扱い

当座預金の残高よりも金額が多い小切手などを振り出した場合、本来なら不渡りとして扱われることになってしまいますが、事前に銀行との契約を結んでおけば一定額まで銀行が立て替えを行うことで不渡りを回避できる借り入れ制度を当座借越といいます。

この当座借越契約に基づいて日常的に現金や現金同等物と同様に制度を活用している場合には、負の現金同等物という扱いとなり資金からマイナスすることとなります。

 

キャッシュフロー計算書を構成する3つの指標

キャッシュフロー計算書は、

  • ・営業キャッシュフロー(本業の営業活動による現金の収支)
  • ・投資キャッシュフロー(固定資産取得や有価証券の購入などによる現金の収支)
  • ・財務キャッシュフロー(借入金調達や社債発行などによる現金の収支)

という3つに分類され、それぞれの現金や預金の収支を示すことになります。

そこで、これらの分類ごとがどのような内容をあらわすのか詳しい内容を確認しておきましょう。

 

営業キャッシュフロー

本業の営業活動として、商品を仕入れ、販売し、従業員などの給料や家賃、水道光熱費などの諸経費を支払うといった資金の流れを示し、本業によりどのくらいキャッシュを稼いだかをあらわします。

また、災害で受け取った保険金による収入や、損害賠償金の支払いなど、他の2種類のキャッシュフロー区分の含まれないものも営業キャッシュフローに含みます。

 

営業キャッシュフローの表示方法

次のいずれかの方法で表示することが必要とされています。

  • ・主要取引ごとのキャッシュフローを総額で表示する直接法による表示
  • ・税金等調整前当期純利益に営業活動にかかる資産や負債の増減、投資活動によるキャッシュフローと財務活動によるキャッシュフローの区分に含む損益項目を加減する間接法による表示

 

営業キャッシュフローがプラスを示す場合の状況

外部からの資金調達に頼らなくても、本業で稼いだキャッシュにより、借入金の返済資金を捻出したり、新たに事業に投資が可能である能力がある状態と考えられます。

 

営業キャッシュフローがマイナスを示す場合の状況

事業活動を続けるための資金を営業活動のみでは稼ぐことができない状態のため、借入金や資産売却などによる資金調達が必要となり、資金繰りのための有利子負債が増えてしまう状況を示します。

営業活動自体がうまくいっていないことをあらわすため、抜本的な対策などが必要といえます。

 

投資キャッシュフロー

投資キャッシュフローには、設備投資を行う、新規事業を立ち上げる、株式や国債などを購入するといった方法がありますが、固定資産の取得・売却、現金同等物以外の短期投資の取得・売却というように、将来の事業のための資金の投入が記載されます。

 

本業が順調なときの投資キャッシュフローの状態

本業が順調であれば営業キャッシュフローはプラスを示します。その場合、本業から得た稼ぎを投資に使い、あまった資金で有利子負債の返済を行うことになるので、投資キャッシュフローはマイナスを示すことになります。

そのため、成長期や拡大期に企業がある場合には、積極的に投資を行うべきであるといえるため、投資キャッシュフローはマイナスになっていてよいということになります。

 

投資キャッシュフローがプラスのときの状況

反対に投資の回収時期にある場合には、投資キャッシュフローがプラスを示すこととなるので、回収できているという視点でみれば評価できるでしょう。

ただ、定期預金に対する預け入れや払い出しも投資キャッシュフローとして区分されるので、定期預金への預け入れでマイナスを示している場合もあるということです。

なお、この投資キャッシュフローには直接法と間接法の区別はありません。

 

財務キャッシュフロー

銀行融資などによる借り入れを利用して資金を調達した場合や、その借り入れを返済した場合などの状況を把握することができるキャッシュフローです。

財務キャッシュフローで確認できることは、借入金による資金調達とその返済以外にも、株式発行による収入や自己株式の取得による支出、配当金の支払、社債発行による収入と社債償還による支出などが挙げられます。

そのため、財務キャッシュフローを確認すれば現在、資金を必要としているのか、そうでないのかの判断が可能となります。

 

資金繰りが苦しいときの財務キャッシュフローの状態

資金繰りが苦しい場合、銀行からの借り入れなどで資金を調達することになれば、財務キャッシュフローはプラスを示します。

反対に本業が好調で資金の調達がないほど、キャッシュが豊富という場合には本業による稼ぎで借入金を返済することになるため、財務活動によるキャッシュフローはマイナスをあらわすことになるのです。

 

本業からの稼ぎを超える投資を行っているとき

本業が順調で多く稼ぎを生んでいる場合でも、本業による稼ぎ以上の投資を行うときには銀行から融資を受けたり、社債を発行するといったこともあるでしょう。

このようなケースで銀行融資や社債発行により資金調達した場合にも、財務活動によるキャッシュフローはプラスを示します

なお、財務キャッシュフローも直接法と間接法といった区別はありません。

 

もう1つのキャッシュフローであるフリーキャッシュフロー

企業が本業で獲得した営業キャッシュフローから、事業維持のために投資に充てたキャッシュフローを差し引いた残りがフリーキャッシュフローです。

あまりであることから、本業で稼ぎ、獲得したキャッシュのうち自由に使うことが可能となるキャッシュといえます。

経営者の判断で使途を自由に決めることが可能となる資金のため、戦略的な事業展開を行うときの原資となりますし、借入金の返済に充てて健全性を高めることもできるでしょう。

そのため、外部からの資金調達に頼ることなく、自らで資金を獲得し事業活動を継続するためにも、フリーキャッシュフローを最大化できる企業経営を行うことが重要といえます。

 

フリーキャッシュフローの計算方法

フリーキャッシュフローを計算する方法は複数の考え方があるので統一された方法はないものの、実務としては営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを合計することで算出することができます。

 

2つのキャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書には、間接法と直接法という様式がありますが、実務では多くの場合間接法が用いられていることがほとんどです。ただ、この2通りの表示方法の違いを理解しておくようにしましょう。

 

間接法によるキャッシュフロー計算書

損益計算書の税引前当期純利益に、減価償却費など非資金損益、有価証券売却益などいくつか増減の原因を加算・減算して、営業キャッシュフローを表示する方法です。

 

間接法のメリット

損益計算書の利益とキャッシュフロー計算書のキャッシュの関係を明らかにすることができ、直接法より簡便に作成が可能であることがメリットです。

 

間接法の短所

営業キャッシュフローを構成するキャッシュ項目について、直接把握することはできません。

 

直接法によるキャッシュフロー計算書

キャッシュの増減の原因ごとに表示する方法で、現預金の増加から現預金の減少を差し引くという形です。

 

直接法のメリット

営業キャッシュフローを構成するキャッシュ項目の収支が把握しやすく、将来的な予測を立てやすいことがメリットです。

 

直接法のデメリット

作成する際に手間がかかってしまうことと、利益がでているのに営業キャッシュフローがマイナスという場合、間接法のように差異の原因がすぐに把握できない点がデメリットといえます。

 

どちらの方法を用いても最終的な残高は同じ

直接法と間接法、どちらの方法を使っても見た目は異なるものの、最終的な残高は同じになります。また、営業キャッシュフロー以外は見た目も内容も異なることはありません。

直接法は収入と支出の総額を表示し、間接法は損益計算書の当期純利益に調整を加えたものであるといえるでしょう。

 

まとめ

キャッシュフロー計算書を作成しておくことにより、損益計算書や貸借対照表だけでは確認できない手元にある資金を把握することができます。

中小企業などは決算書作成にて義務付けられていない書類ではありますが、作成しておくことでキャッシュの動きを知ることができるため、利益が出ているのに倒産してしまうといった黒字倒産を回避することにも繋がります。

キャッシュフロー計算書は作成しないけれど、資金繰り表を用いて資金管理をしているという場合もあるでしょう。

一定期間におけるキャッシュフローの状況をまとめたものがキャッシュフロー計算書であるのに対し、資金繰り表では将来の予測も含めますので、いつどこからいくら入金があるのかを知ることができます。

反対に、いつ、どこにいくら支払いを行う必要があるのかということも把握できるので、資金を必要とするタイミングで資金調達に慌てることもないでしょうし、事前に資金対策を講じることもできるはずです。

そのため、手元の資金を管理するのなら、キャッシュフロー計算書と資金繰り表のどちらも作成しておくとより安心できるでしょう。

会社は赤字でも倒産しないことはありますが、資金がショートすれば黒字でも倒産します。そのことを忘れないように、事前に手元の資金に不足が生じないよう、適切な管理を続けるようにしましょう。