企業間で行う商取引では、現金での取引ではなく売掛金や手形などの売掛債権を介する形での取引が慣習となっています。
ただ、売掛金などが発生しても、代金が回収されるまで1~3か月、時間がかかる場合は半年以上期間があくこともあります。
そこで、回収期間が長いことで悪化した資金繰りを改善させるため、ファクタリングを活用する例が増えていますが、その際の経理処理について理解しておくことが必要です。
仕訳とは
経理処理において必要になる仕訳は、発生した取引を貸借対照表の勘定科目で分ける処理のことです。
取引が発生したとき、その内容によって、資産、負債、費用、収益、資本のいずれかのグループに分けて勘定科目を決めます。
資産と費用は借方に、収益と負債は貸方に分けることができますが、取引発生ごとに仕訳を行うことが必要です。
事業を営む上でどのような取引があったのかを把握できるように、データとして蓄積させていき、売上状態や仕入れの量、これらの回収や支払い、現金の流れなどを知る上で重要な処理といえます。
資産と負債を確認できるのが貸借対照表で、利益と損失は損益計算書に記載されます。
借方・貸方への分類方法
仕訳を行う上で、左は借方、右は貸方にわけられます。
売買による取引で現金を受け取った場合、現金は資産に該当することとなり、資産が増加したと同時に売上という収益を得たことになります。
収益が増えれば貸方に勘定科目を記載し、その相手科目である現金の増加を借方に記載します。
仮に売買取引で不良品などが発生し、返品があった場合には反対の仕訳が行われることになるのです。
売上の代金を現金でなく、掛け取引で後日受け取る予定の場合には、借方は現金ではなく売掛金で処理します。
ファクタリングで売掛金を現金化した場合
ファクタリングは、期日よりも先に保有する売掛金を現金化させる取引です。
通常、掛け取引により売上があがり、売掛金が発生すると、
借方:売掛金 貸方:売上
という仕訳になりますが、ファクタリングを利用した場合にはこの仕訳に新たな仕訳を加える必要があります。
もし銀行から融資を受ければ、現金も増えますが負債も増えます。しかしファクタリングを利用した場合、現金は増えても負債は増えません。
貸借対照表は、現在、会社がどのような財務状況かを示す資料となりますが、ファクタリングを利用することで貸借対照表の見栄えを良くできるともいわれています。
ファクタリングを利用したときの具体的な仕訳例
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仮に売上100万円に対して売掛金が発生した場合には、
借方:売掛金100万円 貸方:売上100万円
という仕訳になりますが、その後、売掛金が期日に入金されれば、
借方:現金100万円 貸方:売掛金100万円
となります。
では、期日に入金されるより前にファクタリングを利用した場合はどうでしょう。
仮にファクタリングを利用する上で発生する手数料が売掛債権額の20%だとした場合で考えると、
借方:未収金80万円 貸方:売掛金100万円
売掛債権売却損20万円
という仕訳で処理します。
売掛債権売却損という費用がファクタリング手数料を処理する上で用いる勘定科目です。
そして売掛金が実際に現金化されたときには、
借方:現金80万円 貸方:未収金80万円
という仕訳が成り立ちます。
なお、ファクタリングの利用で貸借対照表をスマートにできる反面、費用が発生するため収益を圧迫してしまう可能性もあることは理解しておきましょう。
消費税の課税対象となる部分は?
なお、ファクタリング手数料は非課税取引となり、ファクタリングによる買取額分に対してのみ課税されます。
もし100万円の売掛金をファクタリングにおいて、ファクタリング手数料10%支払い90万円現金化により入手したとします。
この場合、ファクタリング手数料の10%は売掛債権の売却損となる部分ですので、消費税の対象にはならず、90万円に消費税が発生するということです。
利益に対して課税される法人税と混同してしまいがちですが、消費税は譲渡額に対して課税されるので、売掛債権であっても譲渡金額に対しては消費税が課税されます。ただ、割り引かれたファクタリング手数料分には課税されません。
ファクタリング手数料分の消費税はファクタリング会社が支払うことになるでしょう。
まとめ
せっかく売上があがり、将来的に入金されるとわかっていても、今支払わなければならない資金が不足してしまえば、売掛金が入金される前に倒産してしまう可能性も否定できません。
そこで、まだ入金されていない売掛金を早く現金化させる方法がファクタリングであり、ファクタリングで売掛債権を売買する取引を行っても、手数料に消費税は発生しないということです。
ファクタリング利用で動くお金は高額なケースも多々あるため、消費税が課税されるかどうかで金額に大きな違いができます。
万一、見積もりの中に消費税が加算されていたら何に対する消費税なのか確認するようにしましょう。