入金を待っている請求書である売掛金を売却し、資金の調達を早期化させる方法をファクタリングといいます。
そのファクタリングをオンラインで利用できるのがクラウドファクタリングですが、そのクライドファクタリングを提供しているOLTAは、事業拡大に向け総額約25億円という金額の資金調達に乗り出したようです。
そこで、クラウドファクタリングとはどのような資金調達方法なのか、利用する上でどのようなメリット・デメリットがあるのかご説明します。
OLTA(オルタ)とは?
2017年4月に創業されたOLTA(オルタ)が取り組んでいるのは入金待ちの請求書である売掛金を売却することで、本来の売掛金入金期日よりも先に資金調達するファクタリングのアップデートといえます。
ファクタリングサービスを提供している企業は数多くありますが、オンラインだけで完結することにより手間がかからず、紙の書類や印鑑などを準備しなくてよいですし、対面での面談も必要ありません。
そのようなクラウドファクタリングサービスを開発したOLTAは、2019年6月24日に、事業をさらに拡大するため総額約25億円、資金を調達することを行ったとのことです。
調達した資金の総額は約30億円
約25億円という多額の資金を準備した方法として、新生銀行、ジャフコ、SBIインベストメント、BEENEXTなどを引受先として第三者割当増資による資金が約18億円、さらにみずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行といった大手メガバンクなど複数の金融機関からの融資によるものとされています。
すでにジャフコ、BEENEXTO、個人投資家(有安伸宏氏)から5億円の資金を調達しているので、累計30億円の資金調達を行ったこととなります。
ファクタリングで資金調達するメリット
そもそもファクタリングは、簡単に手早く資金調達が可能となることがメリットとされています。
売上を計上できていても、その代金が入金されるまで、請求書発行から1~2か月という期間があいてしまう売掛金の存在は、ときに運転資金不足や資金繰り悪化の要因となってしまいます。
もし早めに売掛金が入金されれば…といった悩みを解決してくれるのがファクタリングであり、売上はあがっているのに手元に資金のない状態を解決できます。また、銀行融資に頼りにくい中小企業などでも安心して利用できる方法として、だんだんと注目されるようになりました。
ファクタリングを利用する方のニーズ
ファクタリングを利用したいと考える方の多くは、入金日までの運転資金をどのように集めるかに悩んでいる方です。
巨額の資金を調達したいわけではなく、資金不足に困ったときに不足している分だけ調達できる方法があれば…と考えた末、ファクタリングにたどりついたという方もいるでしょう。
銀行融資よりも圧倒的な早さで資金調達が可能となり、利用者の財務状況などが悪化していてもそれほど問題視されることなく、負債を増やさずに資金を調達できることが魅力です。
銀行から融資を受けたいと考えても、金額が少額であれば審査の対象にすらならないこともあったり、財務状況が悪く審査で承認されないこともあります。
代表者が個人カードで借金を行ったり、親族などからの借り入れで対応したりと、短い期間で資金調達をできる方法はそれほど多くありません。
そのような事態でも、ファクタリングであればスムーズに資金調達が可能となり、将来入金される予定のお金を前倒しで受け取ることができます。
ファクタリングの認知度が低い理由
ファクタリングという資金調達の方法を知らない方もいるようですが、仕組みそのものは新しいわけではなく、国内でも複数の企業がサービス展開していました。
当初は郵送や面談などで申込書類を提出し、対面にて審査を行うことが必要とされていたため、実際に売掛金を買いとってもらえるか確認できるまで日数もかかっていたようです。
近年ではファクタリングサービスを専門とする企業や、取り扱う企業が増えたことにより、見積もりから申し込み、審査、現金化までの流れが即日対応できるファクタリング業者も増えています。
OLTAのクラウドファクタリングならオンラインで完結
OLTAでは、ファクタリングにより売掛金が現金化されるまでの一連の流れをオンラインで完結できるようにしています。
オンライン上で、代表者本人を確認する書類、売却対象となる売掛金の発生を証明できる請求書、直近7か月分の入出金明細、昨年度の決算書などの必要書類を提出することで、独自のAIスコアリングを活用した審査により利用可否の判断ができるようになっています。
審査結果は24時間以内にメールで行われることになりますが、買い取り可能という場合には契約を完了させることで、即日指定した口座に買取金額が入金されるという仕組みであることが特徴といえるでしょう。
OLTAのAIスコアリングとは
審査には約20万社のデータに基いたAIスコアリングが採用されており、人的な判断を必要としないことから人件費を削減できたことで、安い手数料でのファクタリング利用が可能となっているようです。
さらに事業を拡大することも検討できるようになるなど、AIスコアリングによる影響はかなり大きいといえます。
審査において、たとえば中長期で行う融資の場合、数年後に貸し付けた資金がしっかりと返済されるか予測しなければなりません。
ただ、ファクタリングの場合には1~2か月という期間が経過し、売掛先から入金があったときに返還されるかが重要となるので、精度の高い短期的な予測をAIで行っているといえます。
OLTAのクラウドファクタリングを利用する上で注意したいこと
通常、利用者とファクタリング会社のみで契約する2社間ファクタリングを利用した場合、手数料の相場は10~20%程度となることが多いですが、OLTAのクラウドファクタリングは2~9%という安さです。
ただ、注意したいのは買取金額として受け取る資金と、売掛先から入金があったときに支払う資金です。
返還期日に支払うのは買取金額と手数料
一般的なファクタリング会社で2社間ファクタリングにより資金調達した場合には、買取金額から手数料を差し引かれた分が入金されることになります。売掛先から支払期日に売掛金が入金されたときには、その代金をそのままファクタリング会社にスライドさせる形で渡すという流れが一般的です。
OLTAのクラウドファクタリングの場合、買取金額として受け取った後で、後日、売掛先から支払期日に売掛金の支払い分を受け取ったときには、利用金額と手数料を戻す形となります。
買取金額の目安
買取金額や審査通過率は、OLTAのクラウドファクタリングを利用したことがあるか、オンラインバンキングを利用しているか、クラウド会計ソフトを利用しているか、請求先企業は上場企業であるかなどの項目により前後します。
たとえば300万円の売掛金をOLTAのクラウドファクタリングで売却したいと考えた場合、上記の項目にすべてチェックが付かない場合の審査通過率は50%、買取金額は273~294万円となるようです。
しかしすべての項目がクリアできていれば、想定される審査通過率は80%まであがり、請求書の買取金額も285~294万円まで上がります。
返還期日にはこの買取金額と手数料(2~9%)を支払うことになりますので、実質、一般的なファクタリング会社を利用した場合とそれほど差が出ないこともあるかもしれません。
OLTAのクラウドファクタリング利用者の層
OLTAでは、2017年末からクローズドβ版を運用し始めた段階で、申込総額は100億円を突破したようです。
利用者の多くは社員数10~20人程度で、年商規模は1億円以下という中小企業であるとのことで、売掛金の買取金額も数十万円から数百万円が多いとされています。
発注先から大きな契約を提案されても、手元に資金がなければビジネスチャンスを失うことになってしまいます。中小企業で起こりがちな機会損失をなくすためにも、ファクタリングは今後、有効な資金調達の方法として利用されるべきといえるでしょう。
クラウドファクタリングで利用できるのは2社間ファクタリング
OLTAで利用できるのは2社間ファクタリングであるため、売掛先を含めた3社間ファクタリングは利用できません。
ただ、設定される手数料自体が3社間ファクタリング並みに低めであること、売掛先に売掛金を売却して資金調達する事実を知られずファクタリングを利用できる点はメリットといえるでしょう。
ファクタリングサービスを提供する企業にとっては、3社間ファクタリングよりも2社間ファクタリングでの取引のほうが売掛金未回収となるリスクが高いため、OLTAでもオンラインで手続きを完了させる以上は審査部分を重要視することが必要です。
独自で開発したAIスコアリングがその機能を十分に果たしているかどうかは、今回、事業拡大までに至ることができている結果をみれば一目瞭然ともいえます。
中小企業に向けた融資以外の資金調達方法として
海外では数年前からオンラインファクタリングサービスに取り組んでいるプレイヤーがすでに複数存在しています。海外ではすでに明確なニーズとマーケットがあることが確認できているので、スタートアップという形で挑戦しやすい領域だったことも、OLTAがクラウドファクタリングというサービスを行うことができた理由といえるようです。
大企業であれば、銀行融資だけでなく株式や社債など、その後どのような方向性に進むのか、ビジネスにおいて行う行動に合わせながら多様な資金調達の手段を選ぶことができるでしょう。
しかし中小企業の場合、ほとんどが銀行融資に頼るしかない状況であり、銀行からお金を借りることができなければたちまち経営を続けることができなくなってしまいがちです。
そのような状況下にある中小企業が、複数の資金調達の選択肢からもっともよい方法を選ぶことができるようにと取り組んだのがクラウドファクタリングの事業とのことです。
日本でファクタリングが浸透しにくいのはマイナスイメージも理由
海外ではすでに社会的にもファクタリングは必要だと認識されているのに、日本ではまだ浸透していません。
認知度が低い上に法整備も進んでおらず、ファクタリング会社と装いファクタリングサービスを提供するフリをして、貸付業務を行おうとする悪質業者も実際に存在しています。
このような状況から、ファクタリングへのネガディブなイメージを抱く企業も少なくなく、利用してみたいけれど一歩が出ないという状況のこともあるようです。
逆の発想で考えれば伸びしろがある領域や業界であり、本当に安全で有効な資金調達の手法であると周知させれば、ファクタリング業界はかなり活気づくとも考えられます。
未成熟のマーケットだからこそ、正しく認知してもらうことが必要となるといえるでしょう。
OLTAが行ったマイナスイメージを変えようとした方法
ファクタリングに対しては法整備が十分でなく、どこかマイナスイメージが先行してしまっている資金調達の手法だからこそ、OLTAでもこれまで弁護士同席の元、複数回に渡り金融庁とも確認を取ることを繰り返しながら事業を進めてきたようです。
AIスコアリングを開発したメンバーも、以前は銀行での格付けモデルを開発していた経歴があるなど、高精度の審査を実現させるにふさわしい人員のもとで開発されています。
他社との連携強化で法人版クレジットスコア開発を検討
OLTAが今回の資金調達で集めた資金は、組織体制を拡充させるための人材雇用、そしてファクタリング事業を拡大させることに使われるようです。
すでにクラウド会計ソフトを運営するfreee(フリー)と連携し、金融機関や事業会社とのパートナーシップによるネットワークも広げる計画を立てているとのこと。
受発注管理システムやクラウド会計ソフトなどと連携すれば、会計ソフト上で債権の売却ができるなど、会計監理と手元の資金管理を途切れさせず使いやすさを提供できるようになると考えているようです。
さらに各地で運営する地銀などの金融機関との接点もつくり、銀行では融資対象にはならない層でもクラウドファクタリングで資金調達が可能になるといった形に繋げたいとされています。
競合ではなく協業として
クラウドファクタリングは金融機関の代替えではなく、補完するものと捉え、競合ではなく協業相手にして巻き込むことを目標として掲げています。
ファクタリング業界でトップになることのみを目指しているのではなく、クレジットスコアの法人版に似た仕組みを作りたいと考えているようです。
中小企業が本来の状況をリアルタイムで評価できるようになることで、ときには他社と連携しながら別の資金調達方法を紹介することも可能となるでしょう。
スコアリングモデルを核とした中小企業などが抱える課題解決に乗り出したいと考えているとのことです。
すでにOLTAが行う取り組みを実践しているファクタリング会社も!
現在、ファクタリングサービスを対面で提供するファクタリング会社の中にも、すでにOLTAが目指している他社との連携を確立させ、ファクタリングだけにこだわらず様々な資金調達の方法を提案・紹介している企業もあります。
経営コンサルティングなどのサービスも行い、ファクタリング会社でありながらファクタリングだけに縛られない資金調達の方法や相談ができることが大きな特徴といえるでしょう。
大切なのは、日本の企業のうち9割以上を占める中小企業などが資金繰りを悪化させ、事業を継続できなくなって廃業に追い込まれることを回避することです。
今すぐ資金が欲しいというときに、対応できる方法でなければ中小企業のニーズにこたえることはできないでしょうし、資金調達をする意味もなくなります。
今後、ファクタリング業界は今よりももっと多くの方に周知されるようになると予想されますが、OLTAのクラウドファクタリングもそのよいきっかけとなるといえるでしょう。
ただ、現在のファクタリングは対面での面談などがメインとなっており、オンライン上で顔が見えない状態での取引に不安を感じるという経営者も少なくありません。メリットもあればデメリットもあるのがクラウドファクタリングの特徴といえます。